まずは出来るところから

2005年12月23日

ここで何回か動脈硬化について書いてきましたが、今回はその対処法について述べたいと思います。

まずは心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化による病気がどのくらい多いのか?ということですが、2002年のWHO(世界保健機構)報告によると、動脈硬化による病気は世界の死因の第1位を占め、人口の28.7%がこれにより命を落としています。癌(悪性腫瘍)による死亡は12.8%ですから実に2倍以上です。

それではどのようにして心筋梗塞や脳梗塞は起こるのでしょう?梗塞というのはある臓器を栄養している血管がつまってしまい、その臓器に酸素がいかなくなってしまうため臓器が壊死(細胞が死んでしまうこと)に陥ることをいいます。脳梗塞は脳を栄養する血管が、心筋梗塞は心臓を栄養する血管がつまってしまうために起こります。ではどうしてつまってしまうのでしょう?動脈硬化がどんどん進んで血管の内腔が狭くなりすぎてつまってしまうというのとはちょっと違うのです。動脈硬化がすすむと血管の中にプラークというコレステロールの瘤のようなものが形成されます。プラークとは垢のことで歯科では歯垢のことをプラークとよんでいるのはみなさんご存知かと思います。

通常血管の内腔は内皮細胞という細胞で覆われていて血液が固まりづらくなっています。ところがプラークを覆う内皮細胞は傷つき易いのです。傷ができると人間の体はまずはそこで血を止めようとします。体の表面にできた傷であればこのことは人間にとって有利なことなのですが、血管のなかでは多少血が出ても構わないのに、血管の中の傷にたいしても同じように、しなくてもよい反応をしてしまうのです。血管内皮に傷ができるとそこで血を止めようと血小板という血を固まらせる物質が集まり、血の塊(血栓という)ができ血管内腔を塞いでしまい、脳梗塞や心筋梗塞が発症してしまうのです。

そこでこの血小板の働きを弱めて脳梗塞や心筋梗塞を予防する治療はないのか?という疑問が当然わいてきますね。これがあるのです。アメリカで医師みずからが参加した研究でPHS(Physicians’ Health Study)というのがあります。この研究には医師で糖尿病の方々が約2万人参加しました。アスピリンという血小板の働きを弱める薬を飲んだ方々と飲まなかった方々を比較しました。結果は、アスピリンを飲んだ方々では4.0%心筋梗塞が起こったのに対し、飲まなかった方々では10.1%も心筋梗塞が起こってしまったのです。アスピリン1錠飲むだけで心筋梗塞を半分以下に減らせたという結果です。

脳梗塞や心筋梗塞の予防法はいろいろあります。そもそもプラークができないようにする、血管内皮に傷ができづらくする、傷が出来ても血が固まりづらくする、などです。これをすべて完璧にやろうとすると、血圧コントロールも大事ですし、コレステロールを下げることも、糖尿病のコントロールも重要です。そうすると10種類以上の薬が必要になることも少なくないのです。

10種類以上の薬を飲むのはいやだといって全く治療をやめてしまう方がいますが、治療を中断するよりは、たとえばアスピリン1錠だけでもこれだけの効果があるのですから、アスピリン1種類飲むだけでもよい、できることだけをやって頂くのも治療のひとつの「手」なのです。

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