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心機能をよくするペースメーカー

2007年1月23日

みなさん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

 さて、今回は新しいペースメーカーのお話です。いままでのペースメーカーは主に、洞不全症候群や房室ブロックという脈が一時的に止まってしまい、そのため脳血流が一時的に途絶え、結果失神してしまう病気に対して植え込まれていました。基本的に心臓が動くきっかけを与えるもので、心臓の機能を改善させるものではありませんでした。

 近年新型のペースメーカーが開発され、心機能そのものを改善させるものが登場してきました。このベースメーカーの原理を説明する前に、心臓の刺激伝導系について解説しておきます。

 心臓は4つのお部屋で出来ています。上のお部屋を心房、下のお部屋を心室といい、それぞれ左右ありますから4つになります。心房は心室に血液を送るだけで仕事量としてはたいしたことはありません。実際に仕事量の多いのは心室で、とくに全身に血液を送る左心室は最も仕事量の多いお部屋です。

 刺激伝導系ではまず洞房結節というのが、右心房の上の方にあります。ここで心臓のリズムがつくりだされます。それが心房のなかを流れ、心房を収縮させたあと房室結節に達します、心房が収縮したあとわずかに心室の収縮が遅れた方が血行動態上有利なので房室結節ではわずかに電気の通りを遅らせます。その後ヒス束という電気の通り道を通り、右心室のほうへ行く右脚と左心室へ行く左脚に分かれ、そこに電気が流れ、それぞれの心室を刺激し、収縮させます。左脚は右心室と左心室を隔てる心室中隔を通り左心室の側壁(心室中隔の反対側)まで分布しています。左脚はプルキンエ繊維という特殊な心筋で出来ていて、電気を非常に早く導えるため左心室は全体がほぼ同時に収縮し効率よく血液を送りだせます。

 一方心不全になった人の中には、この左脚が電気を通しづらくなっている人が少なからずいます。左脚がうまく電気を伝えない状態を左脚ブロックといいますが、この場合電気は普通の心筋を伝わっていきます。心筋も電気を伝えますが、左脚内を通る時よりずっと遅いため、心室中隔と左心室側壁が同時に収縮しません。中隔が収縮してから側壁が収縮するという現象が起こり、血液を送り出すうえで不利になってしまいます。

 そこで心室中隔と左心室側壁を同時に刺激し、左心室全体を同時に収縮させ左心室が効率よく血液を送り出せるようにした新しいペースメーカーが開発されたのです。中隔と側壁を同時に収縮させることを同期させるといいます。そこでこのペースメーカーによる治療のことを(左脚ブロックのなかった正常な状態に戻すという意味をこめて)「心臓再同期療法=Cardiac Resynchronization Therapy=CRT」といいます。

 この治療について海外で多くの研究がおこなわれています。代表的なものは北米で行われた研究でMIRACLE試験があります。この試験で、CRTをおこなった人では死亡や心不全での入院を4割減らせることがあきらかになりました。

 ところで、心不全の人の死因の約半分は心室細動などの致死的不整脈といわれています。そこでこのペースメーカーに除細動(Defibrillator)機能をもたせたCRT-Dが開発され最近ではCRT-Dが主流になってきています。

 CRT-Dの登場により、薬剤抵抗性になっていままでなら心臓移植以外ないと考えられていた重症心不全の人でも治療できるケースが増えてきています。日本でCRT-Dの適応になる患者さんは十数万人はいるだろうと考えられています。

 種々の理由で心臓移植の進まない日本では、重症心不全の治療においてCRT-Dが今後さらに注目を集める治療になるだろうことが予想されます。

 

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