糖尿病性神経障害について

2007年4月23日

 いままで糖尿病の合併症としては主に循環器の立場から、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化のお話をしてきました。今回は以前よりいわれている3大合併症のひとつである糖尿病性神経障害のお話です。

 3大合併症のうち網膜症や腎症は無症状で進行するのに対し神経障害は早期から自覚症状が現れやすい合併症です。最も一般的な症状は両足の足の裏の違和感からはじまり、徐々に足から下腿部にかけてしびれや痛みが出現してきます。症状が出るのが片方の足のこともあります。特徴的なのは夜に症状が強くなることが多く睡眠障害の原因にもなります。なぜ足に症状が出やすいのかといえば、足の神経は脊髄という神経の束から出ていますが、これは腰椎という腰の骨の隙間から出ています。日本人は足が短いとはいえ足の神経が最も長い神経なので最初に糖尿病の影響を受けやすいのです。

 足の神経以外で影響を受けやすいのが自律神経です。自律神経とは自分で意識して動かす運動神経や知覚神経以外の神経で、内臓の動きや血管の収縮拡張を支配しています。自律神経障害の結果よく起こる症状としては、血管の収縮がうまくおこなわれないためおこる立ちくらみ、腸の動きがうまくコントロールされないために起こる便秘や下痢が代表的です。

 ではなぜ神経障害が起こるのでしょう。神経を養っている血管が動脈硬化を起こすことや、神経を構成しているタンパク質にブドウ糖が結合することも原因のひとつとされていますが、最も重要なのはソルビトールの影響です。神経細胞が受けた刺激を伝える軸索というものを構成する細胞をシュワン細胞といいます。このシュワン細胞にソルビトールが多く溜まってしまうことが神経障害の主因と考えられています。ソルビトールはブドウ糖にアルドース還元酵素が作用することによって作られます。

 ではこのソルビトールを増やさないためにはどうしたらいいのか?方法はふたつです。ひとつはソルビトールの原料であるブドウ糖を少なくする、すなわち糖尿病のコントロールを改善することです。もうひとつはブドウ糖がソルビトールに変化する時に必要な酵素であるアルドース還元酵素の働きを阻止する薬(キネダックという薬があります)を服用することです。この薬は食前に服用することになっていますが、それは血糖値が高い食後に作用が現れれば、よりソルビトールの生成を抑えられるからです。

 神経障害は初期であれば必ず改善します。血糖値を急激に改善させると一時的にしびれや痛みが強くなることもありますが、これは鈍くなっていた神経が回復する過程で起こってくる現象と考えられています。根気良く血糖コントロールを続ければ症状が完全に消えることも珍しくありません。

 足のしびれや立ちくらみなどのある方、糖尿病があるから仕方ないんだと思わず必ず医師にご相談ください。非常に不快な症状である神経障害に協同で立ち向かいましょう。

 

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