心不全と水分制限
心不全とは、心臓のポンプ機能が弱ってしまい、体が要求する血液を十分に送り出せない状態をいいます。これにはうまく拡がれない状態(拡張不全)と送り出す力が弱ってしまう(収縮不全)があるのですが、話がやや専門的になってしまうので、ここでは収縮不全=心不全と思ってください。
水分を過剰にとると全身をめぐる血液の量が増えてしまいます。そのぶん心臓もいっぱい血液を送り出さなくてはなりません。弱った心臓にこれはこたえます。血液を十分に送り出せないため全身に血液がよどんでしまえば「むくみ」が起こります。肺に血液がよどんでしまえば「肺に水がたまる=肺水腫」が起こってしまいます。これは心臓喘息とも言われ、急激な呼吸困難を起こし命にもかかわる非常に重症な状態です。
ではどの程度の水分制限を行えばよいのか?ですが、心不全の悪化で入院治療が必要な方は一日500ml程度まで制限することもありますが、外来で落ち着いている方はここまでの制限は必要ありません。だいたい飲んだ水分量をいちいち測るのは難しいでしょう。「のどが渇いたらコップ一杯の水をめやすに水分補給をする、のどが渇いてもいないのに水分はとらない」をこころがければよいでしょう。
最後に点滴についてです。点滴は血管のなかに直接水分を入れるわけですから、水分をのむよりもっと急激に血液の量を増やしてしまいます。心不全のある方は、急速、大量の点滴は禁物です。
最近の心不全治療に関する話題
アルドステロンという物質は体に水分をためてしまうことと同時に心臓の筋肉にも直接害があるということがいわれてきましたが、最近それを証明する結果が発表されました。
RALES試験というものですが、重症の心不全の患者さん約1600人に対し半分の800人に対してはこのアルドステロンの働きを弱める薬を飲んでいただき、のこり半分の800人は従来の治療を続けたのです。その結果、3年後にはアルドステロンの働きを弱める薬を飲んでいただいた患者さんの方が約3割、死亡率の低下が認められたのです。今後の心不全治療においてアルドステロンの働きを弱める薬(抗アルドステロン薬)が注目されています。