高円宮さまがスカッシュ時に心臓突然死で亡くなられたのは2002年11月21日、約2年前の出来事でご記憶の方も多いと思われます。死因は心室細動、47歳の若さでした。では心室細動とはどんな病気なのでしょう?心臓はすべての筋肉が秩序をもっていっせいに収縮することによってはじめてポンプとして働き、全身に血液を送り出すことが出来ます。

心室細動とは心臓の筋肉が無秩序にばらばらに収縮する状態なのでぴくぴくと動くだけでまったく血液を送り出せない病気です。こうなってしまうとなにもしなければほぼ100%助かりません。

しかし、これは決して心臓の筋肉がすべて死んでしまった状態ではなく秩序さえ取り戻せればまた全身に血液を送り出すことができるのです。この秩序を取り戻させることのできる唯一の器械が除細動器なのです。除細動器は1947年アメリカではじめて使用されて以来、約60年経過していますが、従来のものは心電図が読めなければ使用できず、医療関係者以外は使えないものでした。近年心電図が読めなくても誰でも使える自動体外除細動器(Automated External Defibrillator=AED)が登場し、欧米では一般市民がこれを使用し心臓突然死の救命に大きな成果をあげています。

心室細動が起こった場合電気的除細動までの時間が短ければ短いほど救命率が高いことが分かっています。1分以内にAEDが使用できればなんと90%以上の人が助かるのです。しかし除細動までの時間がたてばたつほど救命率は低下します。1分経過するごとに救命率が約10%低下し10分以上たってしまうと助かる可能性はほとんどなくなってしまうのです。AEDの効果は誰が使用しても同じです。ベテランの医師が使おうが小学生が使おうが同じ効果が得られるのです。

現在日本ではおよそ年間2~3万人の人が心臓突然死(心室細動)で亡くなっていると推定されています。一日で70人前後にもなります。この方々は早期のAED使用によって助けられる可能性が高いのです。日本の救急体制はよく整備されていて119番通報から現場到着まで約6分といわれています。しかしこれでも遅いのです。できるだけ早く除細動するにはそばに居合わせた一般市民がAEDをかけるのが一番なのです。

AEDの使い方はとても簡単です。スイッチはひとつかふたつ、電源スイッチと放電スイッチだけです。機種によっては蓋を開けるだけで電源が入るので放電スイッチしかありません。電極パッドというシップ薬のようなものを指定の場所(電極パッドあるいはそれを入れてある袋に貼る場所がかいてある)に貼りあとは音声ガイドに従い放電スイッチを押すだけでよいのです。とはいえこれを安全に使うのには3時間程度の講習を受ける必要があります。

2004年7月厚生労働省も一般市民によるAEDに本腰を入れ始めました。今後公共施設や職場などにAEDの設置が進められ、そう遠くない将来には一家に1台AEDという時代がやってくると思います。

心臓突然死を助けるには一般市民の方の協力が是非必要です。あなたも講習会に参加しAEDを使えるようになってください。そうすれば一生のうちになんにんかの命を救えるかもしれません。
(この原稿の要約が平成17年1月1日号の広報まえばしに掲載予定です。)