最近、雑誌や新聞などでメタボリックシンドロ-ムという言葉を目にすることが多くなってきました。じゃメタボリックシンドロームってなに?と聞かれて正確に答えられる方は少ないと思います。そこで今回はこのメタボリックシンドロームについて解説したいと思います。

動脈硬化の危険因子には高血圧、糖尿病、コレステロールや中性脂肪が高い、肥満などがあることはご存知かと思います。1920年代からこれらの病気を同時にもつ人が多数いることが分かっていました。そこでこれらの病気の根っこにあるものはなにか?と研究した先生がいました。リーベン先生はその本質が「インシュリンがでてもなかなか血糖が下がらない体質になってしまうこと=インシュリン抵抗性」ではないかと、1988年糖尿病の専門誌に発表したのです。

そしてこのような病態のことをシンドロームXと名づけました。それ以後なんにんかの先生たちがほぼ同様の病態を、内臓肥満症候群、危険因子重複症候群、死の四重奏などと呼んできました。近年このインシュリン抵抗性を基礎に動脈硬化の危険因子を複数もつ病態をメタボリックシンドロームという言葉で統一しようという動きがでてきました。そう、メタボリックシンドローム(直訳すれば代謝性症候群)とはインシュリン抵抗性を基礎に動脈硬化の危険因子を複数持つ病態のことです。

世界的に見れば、このメタボリックシンドロームの診断基準がいくつか提唱されていますが、日本ではまだ診断基準は確立していません。私見ですが、予想される日本での診断基準を以下に記します。

1、空腹時血糖110以上、2、中性脂肪150以上、3、善玉コレステロール
(=HDL-C)男40以下、女50以下、4、血圧130/85以上、5、ウエストサイズ男85cm以上、女90cm以上
上記5つのうち3つ以上あてはまる人はメタボリックシンドロームと診断されるようになると思われます。あなたはどうでしょうか?

メタボリックシンドロームになると心筋梗塞や脳梗塞などの心臓血管死がそうでない場合に比べ3倍になるとの報告があります。怖いですね。
発症機序としては遺伝的素因、運動不足、過食、ストレスが原因とされています。遺伝だけはどうにもなりませんが、ほかの事はこころがけしだいですね。メタボリックシンドロームにならないためには普段から食べ過ぎず、体を動かし、ストレスをためない、もし溜まったらうまく発散させることです。

口で言うほど簡単なことではないかもしれませんが、どれかひとつでもいいからはじめてみませんか?あなた自身の健康のために。

この原稿をかいた後、日本の8学会が合同でメタボリックシンドロームの診断基準を発表しました。

日本の診断基準は内臓肥満に重点を置き以下のように決まりました。

1、 必須条件:ウエスト周囲径、男性 85cm以上、女性 90cm以上

2、 脂質:中性脂肪150以上、HDLコレステロール40未満、いずれか一方または両方

3、 血圧:収縮期血圧130以上、拡張期血圧85以上、いずれか一方、または両方

4、 空腹時血糖値:110以上

1のウエスト径を満たし、2~4のうち2つ以上あてはまる場合メタボリックシンドロームと診断することになりました。