BNPと心不全

BNPとはbrain natriuretic peptideのことで、日本語になおすと、脳性ナトリウム利尿ペプチドです。といってもなんのことだかピンときませんね。実は心臓って頭がいいんです。じぶんに負担がかかるとなんとか自分の負担を減らそうとします。全身をめぐる血液の量が減れば心臓が送り出さなければならない血液の量も減って、心臓の負担は軽くなります。そこで心臓は自分に負担がかかってくると「おしっこ」をださせるホルモン=BNPを分泌し、全身をめぐる血液の量を減らし、自分への負担を軽くしようとします。そう、BNPとは心臓から分泌されるおしっこをださせるホルモンのことなのです。

このことを利用し、逆に血液中のBNPを測定することによって、心臓への負担がどの位か、言い換えれば心不全の程度を知ることができるのです。
BNPの値が高ければ高いほど心不全は重症です。正常値は18.4以下ですが、少しぐらい高くても心配いりません。40を超えると要注意、100を超えたら精密検査をして治療が必要となります。200を超えると入院の危険も出てくる心不全です。500を超えた場合は最重症で、細心の注意と全力の治療が必要となります。そこでBNP200を超えた方には、生活指導や内服薬の変更あるいは追加を行いなんとか200以内におさえる努力をしています。

狭心症や発作性の不整脈の場合は常に心臓に負担がかかっているわけではないので、BNPが低値でも安心はできません。発作をおこさない治療が必要となります。
腎不全のあるかたでは、心機能の実力以上にBNPが上昇してしまう場合があります。このような時は、診察所見、胸部のレントゲン写真、心臓超音波検査、運動負荷心電図などのうち必要な検査を行いその人の心機能を評価しています。

BNPは採血するだけで心不全の程度を知ることのできる画期的な検査です。自覚症状出現前、BNP上昇時に治療強化を行い心不全による入院を未然に防いでいることもまれではありません。
BNPが100以上の方、とくに200に近い方は時々チェックが必要です。採血が痛いなんて嫌がらずに必要な検査は受けましょうね。