血液のなかを流れているタンパクにはアルブミンとグロブリンがあります。尿中に出てくるタンパクはこのうちアルブミンのほうです。早期の糖尿病性腎症でアルブミンが尿中に出てくることは以前より知られていました。そこでこれまでは主に早期の糖尿病性腎症を見つけるために尿のアルブミンが測定されていました。

尿中アルブミンの正常値は30以下で、30~300を微量アルブミン尿といい、この時期を早期腎症といいます。300以上を持続性タンパク尿といい、顕性腎症期と分類しています。

ところでなぜ尿の中にアルブミンが漏れてきてしまうのでしょうか?尿は腎臓の糸球体というところでつくられます。糸球体は入ってくる動脈と出て行く動脈、その中間にぐるぐると糸を巻いたような毛細血管でできています。尿はこの毛細血管で濾されて作られています。尿の中のアルブミンが増えてしまうのは1、この毛細血管の圧力が上がってしまう(専門的にいえば糸球体内圧の上昇)2、この毛細血管の壁(内皮)に障害が起こってしまう(専門的には血管内皮障害)、このふたつの機序により尿のなかにアルブミンが漏れてしまうのです。

近年このアルブミン尿は腎障害だけでなく心筋梗塞など心臓血管系の病気と非常に関連が深いことがわかってきました。またアルブミン尿の原因は糖尿病だけではなく、高血圧など血管障害をひきおこす病気で増えてくることも明らかにされつつあります。さらにアルブミン尿を減らす治療をすれば腎障害はもとより心臓血管系の病気も減らせることがわかっています。

2002年10月PREVEND研究が報告されました。これは糖尿病や高血圧のないオランダのグロニンゲンという街の一般住民を対象とした研究です。この研究では、尿中アルブミンがたくさん出ている人はほとんど出ていない人にくらべ、数十倍心臓血管系の病気による死亡が多いという衝撃的な結果がでました。要するに尿中アルブミンの量によって心臓血管系の病気にどの程度なりやすいか予測できるということです。

それでは尿中のアルブミンを減らす治療はあるの?ということになりますが、答えは「あります」です。まずは高血圧や糖尿病のコントロールを十分にすることです。そのうえで上記機序を考えます。糸球体内圧を下げ、血管内皮を保護してくれる薬があればよいのですが、これがあるんですね。高血圧の薬のいくつかは糸球体内圧を下げることがわかっていますし、血管内皮を保護する薬もいくつか知られています。

これからの高血圧、糖尿病の治療において、尿中アルブミンを意識し、もしこれが出ていればこれを少なくするような治療をこころがけることが非常に大切だと考えられます。