高血圧、糖尿病、高脂血症(コレステロールが高い)、最近話題のメタボリックシンドロームは症状がないことがほとんどです。ではなぜこれらの病気は治療が必要なのでしょうか?そう、みなさんご存知のとおり動脈硬化をおこし、脳卒中や心筋梗塞など怖い病気にならないように治療しているのです。

私は今どれ位の動脈硬化を起こしているの?あるいは、食事療法も運動もがんばった、薬もきちんと飲んで血圧も血糖もコレステロールも良くなっている、動脈硬化はどれ位良くなったのだろう?これらは当然の疑問ですね。

それでは動脈硬化がどれ位なのかを示す指標となる検査はどんなものがあるのでしょうか?いろいろな検査があり、まだ研究段階のものが多いのが現状ですが、比較的簡単に出来、動脈硬化との関連が明らかになっているものが3つあります。以下この3つの検査について解説します。

1) 頚動脈エコーによるIMT
 血管は内膜、中膜、外膜の3層でできています。首のところを通る血管(頚動脈)の内膜と中膜の厚さの和(=内膜中膜複合体肥厚度=Intima-Media Thickness of carotid artery)のことをIMTといい、IMTが厚くなればなるほど動脈硬化が進行しているといわれています。脳卒中や心筋梗塞と非常に関連が深いことがわかっています。IMTは首のところのエコーをすることで簡単に計測できます。

2)脈派伝播速度(PWV=Pulse Wave Velocity)=いわゆる血管年齢
 血管が硬ければ硬いほど脈が血管の中を跳ね返って伝わっていくので、脈は速く伝わります。逆にやわらかい血管では脈が血管の弾力に吸収されるので、脈はゆっくり伝わります。脈の伝わりかたの速さを計測することで動脈硬化の強さをみているのです。PWVの計測は専用の器械で行います。

3)高感度CRP
 CRPとはもともと炎症の強さを表す指標です。炎症とは、微生物が感染することなどで組織が赤くなったり、腫れたり、痛んだりすることです。しかし、近年ではこのCRPの上昇と動脈硬化の関連を示す報告が相次いでなされています。欧州高血圧学会、欧州心臓病学会では動脈硬化の指標としてCRPの測定を推奨し、1.0mg/L以上であれば要注意としています。これは採血検査で計測できます。

高血圧、糖尿病、高脂血症の治療をしている方で、上記の検査値が改善してくる方はそのままの治療を続ければよいということになりますし、悪化してきてしまう方は治療の見直しが必要となります。治療方針を決めるうえで非常に大事な検査ということになりますね。

高血圧、糖尿病、高脂血症の治療をしている方が血圧値、血糖値、コレステロール値を気にすることはもちろん大事ですが、その結果起こってくる動脈硬化の値に目を向けることも忘れないで欲しいのです。