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失神について

2007年7月23日

今回は失神についてお話します。まずは失神の定義ですが、1、一過性の意識消失発作で2、数分で完全に元の状態にもどるもの、のことをいいます。2は大事なところで、意識は戻ったけれど、完全ではなくボーっとしている場合は失神ではなく意識障害の原因を考えなければなりません。

 意識障害の原因はたくさんあり、AIUEOTIPSなんて覚え方をする場合もあります。例を挙げると、アルコール(Alcohol)、低血糖、高血糖(Insulin)、尿毒症(Uremia)、高血圧性脳症、肝性脳症、電解質異常、炭酸ガスナルコーシス(Encephalopathy)、低酸素、一酸化炭素中毒(Oxygen)、外傷、熱中症、低体温(Trauma)、感染症(Infection)、精神科疾患(Psychiatric)、ショック、脳血管障害、てんかん発作(Shock、Stroke)、などいろいろです。医師はこれらの診断をつける場合、患者さんの話を聞き(本人から聞けない場合も多く、付き添いから聞くことも含みますが)、診察をし、病気を絞り込んで検査をして診断にいたるのです。

 失神というとほとんどの方が脳の病気を心配しますが、頻度はそう多くありません。確かに一過性脳虚血発作(TIA)で意識を失うことはありますが、この場合は手足がうまく動かない、しびれる、言葉がうまくしゃべれない、めまいがあるなどの症状を伴うことがほとんどで、意識消失単独のTIAはまずないと考えられています。

 では失神の原因として多い疾患は何なのでしょうか。失神の3大原因は1、心臓血管系失神、2、起立性失神、3、迷走神経反射性失神です。

 このうち最も重要なのは1、の心臓血管系失神です。診断がつかず治療をしない場合、1年後の死亡率は約25%です。報告によって大分差はありますが、失神に占める割合は20%程度です。特徴としては立ち上がるなどのきっかけなしに、突然意識を失うことです。原因疾患としては、不整脈、大動脈弁狭窄症、心筋症、心不全、大動脈解離、肺塞栓があり、胸部のレントゲン、心電図、心エコー、24時間心電図などの検査のうち必要な検査をして診断をつけることが大事です。診断がつけば治療可能な病気が多いのも心臓血管系失神の特徴です。その意味でも診断をつけることが重要です。

 2、の起立性失神も失神の原因として頻度の高いものです。立ち上がったときに脳への血流が減少しておこります。原因としては脳血流がもともと低下しやすい状態にあること、です。すなわち、貧血や出血、脱水状態がないかの検索が必要です。出血、貧血の原因として重要なものは消化管出血、婦人科疾患です。採血、胃カメラ、腹部エコーなどが必要になることがあります。

 3、の迷走神経反射性失神は頻度としては高いものの、重症な病気が隠れている可能性は低いので1、に比べ重要度は低いといえます。驚き、恐怖、怒り、笑いなどの感情の動揺や、排尿、排便、咳、嘔吐などにより迷走神経という神経が刺激され血圧低下と徐脈(脈がゆっくりになること)になることにより脳血流が低下して失神がおこります。前駆症状として冷や汗、ふらつき、めまい、吐き気を伴うことが多いとされています。ほとんどの場合点滴だけで改善しますので繰り返しおこらなければあまり心配の要らない失神です。

 ヨーロッパで行われた失神の研究では、1、65歳以上、2、心疾患の既往歴、3、前駆症状なし、4、心電図異常ありのうちひとつも当てはまらない場合1年後の死亡率は0%だったのに対し、すべて当てはまった人の死亡率は57%でした。やはり最も怖いのは心臓血管性失神です。

 失神は一生のうちでは約半数の人におこるといわれ、医療機関を受診しない人も多いようです。必要以上に怖がることはありませんが、やはり失神を起こした場合、1度は心臓血管性失神の可能性について検査しておくことをお勧めします。

 

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